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【まつもと子ども留学事業】菅谷昭(すげのやあきら)松本市長 記者会見(2013.12.17)より

(動画 17 分)
何かしなくてはいけない。ずっと考えておりましたが、国が動かない状況であるならば、たとえば私自身が、松本市という自治体として何かできないかということで...
●すげのや昭 プロフィール(公式ホームページ)

低線量被ばくの問題、特に「子どもあるいは妊産婦は、長期にわたる被ばくによって、特に内部被ばく、外部被ばくによって、今後健康被害が起こるから、命を守るためには国策として、集団的にどこかに子どもたちを移住させたらどうですか」とずっと申しあげてきました。まだこの問題は、国に耳を傾けてもらえない。

しかし、被ばくは毎日起こっているわけです。

こういう状況というのは「誰かが何とかしなくてはいけない」と私は思いました。まさに私がチェルノブイリに飛び込んだ、あの時の気持ちと変わらないわけですよね。

何かしなくてはいけない。ずっと考えておりましたが、国が動かない状況であるならば、たとえば私自身が松本市という自治体として何かできないかということで、副市長以下、教育委員会、教育委員長さんともいろいろご相談して話を進めてきました。

その一方で、今松本に移住されている福島の方々とか、現在福島で放射能から子どもたちを守るというグループの皆さんの中で、子どもを何とか移住できないかという考えがあるということで、私がこういうように言ってますから、彼らも私の方に来まして「松本市で何とかできませんでしょうか」と、本当に涙を流して依頼された経過もあります。そうなりますと、私としましても「これは何とかしなくてはいけない」と、ますますその思いが強くなります。

現実に、今チェルノブイリの子どもたち、低濃度汚染地に住んでいる子どもたちに健康被害が出ているわけですよね。今年は事故後27年経っているわけですよ。その子どもたちは、10歳あるいは15歳未満と、まさに事故の後で生まれた子どもたちが、今低濃度の汚染地に住んでいて、免疫機能が落ちていて、上気道感染とか、あるいは非常に疲れやすいとか、気力がないとか、またベイビーに対しては低出生体重児が増えているとか、先天異常の状況があるということが、まだ27年経っても現実に起こっている。こういうことを考えると、福島では絶対こういうことを起こしてはいけないという思いが私としては非常に強く、こういうことを経験しているものですから「何とかしたい」ということがありまして、今回、そういう本当に向こうから子どもさんが来るということがあれば、松本市としては協力していく方向で動きたいという段取りで進めてきた訳でございます。

実は先日、福島に今お住まいで、そして「子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク」の世話人をされている方と対談をして、取材を受けたのですけれども、その方に「福島のお子さんたちはどのような状況ですか」ということをお聞きしましたら、先日新聞にもありましたように、福島のお子さんたちは被ばくではないですが、外に出ないために肥満傾向にあると言ってました。それから運動能力が非常に落ちていると言ってました。走ったり、飛び跳ねたり、投げたりする能力が落ちていて、特にこれは僕もびっくりしたのですけれども、小学校に入学する子どもたちが、つまずきやすい、転びやすい、それから片足で靴下をはくことが耐えられない。これは、まさに大人のロコモティブシンドロームですよね。運動器症候群ですよね。家にずっといて、子どもたちは筋力が落ちてしまったのですね。こんなことは異常ですよね。

また家にいることによって、彼らはゲームとかやっていて、外のいろいろなことに興味・関心が低下しているから、無感動・無気力になっている。こういう状況を耳にしていると、これは被ばくではないですけれども、間接的に被ばくを恐れて家庭の中にいる。こういう子どもたちが、将来どういうことになると思いますか。記者だったらわかるでしょう。精神面においても、体力面においても、これが現実に、健康な子どもたちが、将来、10年、20年後にいったいどうなるのでしょうか。そういうことを含めて、何とかしなくてはいけない。

彼の話では、保育園の園児がですね、普通の場合は、園舎がコンクリートになっているから、この中にいるかぎり被ばくは非常に少ない。ところが、これが8月になると、個人の被ばく線量がボンと上がるんだそうです。 先生が調べて、折れ線グラフを作った。ボンと上がる。なぜか。夏休みなんですよね。夏休みになると、子どもたちは、保育園でなくて、あちこち遊ぶわけですよね。ご承知のとおり、野や山に行くという。ああいう所は汚染されているわけですよね。今、皆さんご承知のとおり、除染と言ったら、ただ学校の近くとか、家の周りをやって、野山とか、ああいう所はやっていないではないですか。ところが子どもたちは、夏になると遊びに行くわけですよ。明らかに、サイエンティフィックに、そういう「8月に上がるというのは、多分そういうことではないですか」と言うと、「確かにそうだね」と、こういう事実があるわけです。

だから益々、早い段階に何とかしなくてはならないんじゃないかということで、松本市としてやることは、集団の移住の場合には、一つは「教育の問題」ですよね。小学生・中学生の教育環境をどうするかということ。もう一つが「生活面」、特に住居の問題をどうするかということ。こういう問題に対して、副市長以下、庁内で検討・協議する組織を作り、これまで検討してまいりまして、その中で候補地として、今お願いしているのが四賀地域でございます。

僕が一番思うのは、今回の場合は、地域の皆さんのご協力なくしてはできないことであります。そういう意味で、ご検討いただいたところ、地域の皆さん、現段階ではそれぞれの町会の皆さんとか、あるいは社協のような団体とか、それに類するさまざまな皆さんにお話をして、もちろん学校もそうですけれども、今のところご協力いただけるような方向になっています。いよいよ「子どもの留学」という表現になっておりますけれども、スタートする形で、福島の方々もNPOを立ち上げたものですから、来年の4月を目指していきたいということになっております。

これは、日本ではどこもやっておりません。初めての試みなんです。こういう試みによって、私は「松本モデル」というものを作りまして、これが全国に広がってほしいなと思っています。まさに国難であります。日本の子どもたちを、特に福島関連の子どもたちを皆で命を守ってあげるということは、国民の義務であり、大人の義務なんですよね。

そう思っていても、具体的にどうしたらいいかわからなかったけれども、今回松本が一つのモデルとして成功事例としていけば、私は全国の本当に心ある皆さんがぜひとも福島の子どもたちを守ろうという動きになって、いろんな地域への留学が進めばいいなと思っております。

原発の事故によって光と影があるのですけれども、影は明らかに原発事故でいろんな問題がありますが、光というのは、今みたいな、今度は福島の子どもたちと各地域の子どもたちとの交流が始まるのですよね。それがお互いに支えあうということで、私はチェルノブイリに行ったときに、向こうの子どもたちを、彼らがダンス(民族舞踊)ができるものですから、日本全国へ私は連れて回ったんですよね、そして、日本の子どもたちとチェルノブイリの子どもたちの交流をさせたわけです。その時には日本の子どもたちは、ある意味では友情という立場でチェルノブイリの子どもたちを支えようとしてくれたのです。今はどうでしょう。今は同じ立場になっているのです。日本の今は、福島の子どもたちとチェルノブイリの子どもたちは、ピアカウンセリングになってしまうのですね。

日本が汚染されてしまった。そこに住んでいる子どもたち、こういう問題を含めて、私はお互いに日本の国内でいいから、深い交流をすることによって、今度は受け入れる子どもたちも「福島の皆は大変なんだね」という思いになれるのは、とても大事だと思うし、お互いにいい経験になる。現段階では、各地域の子どもたちは福島に行けないけれども、いつか福島の街が除染されてきれいになったときは、福島を訪れる。それは大人になるかもしれない。しかし、そういうものも私は日本全体として作っていかなくてはいけないと、21世紀を背負う子どもたちに対して、国は大きな施策を持つべきだと思っています。

今回こういう形で、まさに子どもだけが留学するという、昔でいえば戦争中の集団疎開という形になるわけです。

ちょっと余談ですけれども、今年、ソフトバンクの会長である王氏に、「この話を僕は進めていますけれども、なかなか福島のお父さん、お母さんたちが子どもと離れて暮らすのはつらいということで、難しいんですよね」と雑談しましたときに、王氏は「これはとても大事なことで、むしろこれは子どもたちを自立させるためには、とてもいいきっかけではないですか」ということを言われました。王氏は私より2つ3つ年上ですけれども、「僕ら昔、戦争で疎開したではないですか。まさに国難の状況であって、子どもたちを守るためにも、こういうことは大変いいことではないですか」とお話しされました。

王氏は「子どもを自立させるためにも、とてもいい」と。ある意味で王氏が言いたかったのは「日本では子どもに対して過保護な状況である」ということで、「子どもを自立させるという意味だったら、こういうことも決して悪くはない」と言われたと思います。

いずれにしましても、こういう状況であるものですから、いよいよ福島からのお子さんたちを受け入れる形で、松本市民の皆さんにもぜひとも分かっていただいて、「松本モデル」に協力していただければ大変ありがたいなと思っていて、一番は地域の皆さんにぜひともご協力をお願いしたいというのが、私の思いであります。


「成功させるために」というか、私が言ってるのは「被ばくから子どもの命を守る」という問題ですよね。これは長期にわたったときに、どういうことが起こるかということは、チェルノブイリで今起こっているわけですから。それぞれ皆さんお考えがありますから、こちらから強引にではなくて、向こうからそういう気持ちがあれば、それを僕らがお受けするということであって、我々が積極的に「いらっしゃい」と言うのではなくて、まさに向こうの皆さんが、本当に子どもは、やっぱりその「だけは」という気持ちがあれば、僕らは安心して来ていただけるような、そういう体制を整えるということだと思うんですよ。お母さん、お父さんたちが、安心して子どもを預けられるという、そういう体制をきちんとしていきたいと思います。

平成25年12月17日 市長定例記者会見(松本市公式ホームページ)
●すげのや昭 プロフィール(公式ホームページ)